第84章

原崎野矢視点

従兄はもう帰った。俺だけがその場に取り残され、ぼんやりと立ち尽くす。

頭の中では、今日、実家で起きたことが何度も何度も再生されていた。

金原亜沙美から電話が入り、告げ口めいた言葉が投げ込まれる。

それで原崎家は、広瀬妃菜への嫌悪をさらに強めた。

家の人間は皆、同じ方向を向いて俺を責め立てる。

「もう広瀬妃菜に執着するな」と。

祖父は胸元を押さえ、顔色を青黒くしていた。視線には、情けなさと苛立ち――そして「どうして分からないんだ」という怒りが混じっている。

俺は黙って聞いていた。胸の奥に、鉛みたいな苛立ちがぎゅうぎゅうと押し込まれていく。

分かっている。

欲し...

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