第97章

原崎野矢視点

広瀬妃菜は、俺の言葉に明らかに怯えた。紅い唇がかすかに開き、どう返せばいいのか分からないみたいに視線が泳ぐ。

「政略結婚の話」

声が自分でも驚くほど冷たかった。

「……本当なのか?」

広瀬妃菜は目をわずかに見開き、やがて、ゆっくり頷く。

「……はい」

掠れた声。

「本当です」

――ぐっと、拳を握り締めた。

この数日、広瀬妃菜からは一度も連絡がなかった。説明も、弁解も。

俺が病院へ連れて行ったあの日、目を覚ましてからというもの、彼女は俺を避けるようになった。話しかけても、どこか上の空で、愛想もない。

俺のほうから歩み寄って空気を変えようと思っていた。

な...

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