第7章

恵美視点

朝の光が窓から差し込んでいるけれど、その暖かさは感じられない。私は窓際に座り、手の中のコーヒーカップは一口もつけられないまま。外では、港町が雪に埋もれている。静かで、美しい。けれど私の胸の中は、混沌そのものだった。

昨夜の出来事が、何度も頭の中で繰り返される。尚人の顔。その目に宿っていた狂気じみた光。前の人生で、あの目は私が何もかも失って死んでいくのをただ見ていた。今生のあの目は、もっと悪い何かに燃えている。

ノックの音。ドアが開き、亮介が医療キットを手に部屋に入ってきた。憔悴しきった顔で、目の下には濃い隈が浮かんでいる。眠っていないのだろう。

「手首、見せて」

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