第6章
王妃は衰弱していたため、自らの侍女を遣わした。
王妃の侍女は私の服を乾かして寒気を払うと、忠実に王妃の意向を伝えた。
「陛下、王妃様は、エリザベス王女が目覚めて証言するまで待つべきだとお考えです」
一時間ほど経った頃、エリザベスはようやく目を覚ました。
エミリア貴妃がすぐさま駆け寄り、急かすように言った。
「エリザベス、陛下に申し上げるのです。誰がお前を水に突き落としたのかを」
エリザベスはゆっくりとベッドから身を起こすと、皆の予想に反し、王の御前で跪いた。
「父上」
その声ははっきりと、そして揺るぎなかった。
「月妃は無罪です。私に魔法を使い、水楼に閉じ込めるよう侍女に命じたのは、母上様です」
「無礼者!」
エミリア貴妃は怒りに我を忘れ、エリザベスに平手打ちを食らわせようと手を振り上げた。
「よくも私を陥れようなどと!」
しかしエリザベスは毅然としたまま、ゆっくりと袖をまくり上げた。その腕には、びっしりとついた火傷の痕が露わになる。あるものはかさぶたになり、あるものはまだ血が滲んでいた。
「父上、私はエミリア貴妃の子どもになりたくありません。長年、エミリア貴妃は私を虐待しただけでなく、禁呪を用いて第二王子を殺害しました。そして今日、彼女は月妃を陥れる計画を立て、私の死を利用してその罪をなすりつけようとしたのです」
月妃の目に一瞬驚きがよぎったが、すぐに冷静さを取り戻した。
王の魔力の威圧が王宮内をますます重くし、空気さえも凝固したかのようだ。
エリザベスは跪いたまま言った。
「どうか月妃をお責めになりませんよう。彼女は王宮中で、私に最もよくしてくださった方なのです」
王はしばし沈黙した後、命を下した。
「エミリアを裁判所へ送れ。裁きを受けさせよ」
エミリアは顔面蒼白となり、地にひれ伏して許しを乞うた。王が微動だにしないのを見ると、彼女は突如としてヴィクトリアの方を向き、甲高い声で叫んだ。
「ヴィクトリア、そもそも私を使って月妃を陥れるよう提案したのは貴方でしょう!彼女が王妃と親しすぎるから、排除しなければならないと言ったではありませんか!」
ヴィクトリアは表情を変えず、冷ややかに否定した。
「エミリア、私は常に王妃様を尊敬しております」
王宮内の張り詰めた空気がわずかに和らいだその時、私はようやく目眩を感じた。倒れ込む瞬間、王が私に手を差し伸べたのが見えた気がした。
私が目を覚ましたのは、三日後のことだった。
侍女のルーシーが教えてくれた。裁判所が第二王子の件を再調査し、エミリアが確かに禁呪を使用したことを確認した、と。その結果、エミリアの一族は全ての魔法権限を剥奪され、辺境の地へと追放された。そして私は、王によって月貴妃に昇格されたという。
臨月殿はにわかに賑やかになった。妃たちがこぞって私に取り入ろうとやって来たが、皆リリーが張った魔法の結界に阻まれて門前払いとなった。
体調が回復した日、私は王に謁見を願い出て、一つ頼み事をした。
「エリザベスを養育したいだと?」
王は驚いたように私を見た。
「恨んではいないのか?あの日、彼女がいなければ、お前があのような目に遭うこともなかった」
私は平然と答えた。
「陛下、あの子はまだ子どもです。大人の悪事の責任を負うべきではありません。それに、最終的に真実を明らかにしてくれたのは彼女です」
王は私を深く見つめ、やがてその願いを許した。
エリザベスが臨月殿に越してきた時、彼女は私を見るなりその胸に飛び込み、声を上げて泣いた。
「私が貴方を殺すところだった……貴方に憎まれると思っていました……」
私は彼女の髪を撫でながら言った。
「お前は何も間違ったことはしていないわ。謝る必要なんてないの。今日から、この臨月殿がお前の家よ」
こうして、私の一人で四人を育てる生活が始まった。
毎晩、私は魔法の投影で三人の子どもたちに物語を語って聞かせた。レオンは『冒険伝説』が好きで、アレックスは『騎士物語』をこよなく愛し、そしてエリザベスは『シンデレラ』に夢中だった。
末っ子のソフィアはまだ小さいが、まるで話が分かるかのように、あーうーと相槌を打つのだった。
ヴィクトリア貴妃はヴィクトリアの告発により、王から王宮の事務を補佐する権限を取り上げられたが、王妃はその権限を私に委ねたのだった。
表向きには、王宮は平穏を取り戻したように見えた。
