第110章

スマートフォンの画面が、暗くなった。

星野凛は伏し目がちに、畳に落ちた端末を見つめていた。胃の奥から何かがせり上がってくる。冷たく、溶けない。歯を食いしばって、飲み込んだ。

星野寒は急須を持ち上げ、凛の茶碗に湯を注いだ。慢然と、まるで時間が止まっても構わないような手つきで。目も上げなかった。

「どうした。黙って。」

凛はしゃがんで端末を拾おうとした。手首を掴まれ、端末を奪われた。

「見ないで。」声が掠れた。「汚いから。」

寒は構わなかった。親指で画面を滑らせた。

個室の空気が、固まった。

妊娠検査報告書。「妊娠6週+」という黒い文字が、白地に鮮明に浮かんでいた。その下に、白鳥...

ログインして続きを読む