第121章

五年前のことだ。

あの夜の破片が、この瞬間に一気に押し寄せてきた。

六本木の会員制クラブの個室。皮張りのソファの感触、煙草とウイスキーが混じり合った空気、氷がグラスの縁に当たる音。結城司は覚えている——一杯また一杯と流し込んでいたこと、照明が琥珀色に滲んでいたこと、その年に起きたすべてを酒で溺れさせようとしていたこと。凪の死。火事。あの、制御を失った怒り。

それ以降は、何もない。

意識はある瞬間に途切れた。フィルムを誰かに乱暴に切り取られたように。

次に気がついたのは、翌朝だった。

豊洲のタワーマンション最上階の寝室。光が鎧戸の隙間から斜めに差し込んで、細い光の柱が床に落ちていた。...

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