第123章

凛は顔を上げなかった。

結城司と渡り合ってきた疲労が、まだ全身に残っていた。骨の髄まで倦怠感が染み込んでいる。受付からの呼びかけに、しばらく間を置いてから、鉛筆を置いた。

「通してください」

業界の義理がある。断る理由がなかった。

望月凪が入ってくる様子には、意識的な軽やかさがあった。急ぐでも遅れるでもない歩調で、視線をスタジオの中に一巡りさせ、それから感嘆の声を上げた。

「わあ、さすがですね」声が弾んだ。「センスがいい。すごく雰囲気があって」

そう言いながら、その目は何も鑑賞していなかった。

凛は設計台のそばに立ち、静かに彼女を見ていた。

望月凪は今日、念入りに装っていた。淡...

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