第13章

陽太は振り返らなかった。

廊下の灯りの中、背中が細い影を引きながら遠ざかっていく。角を曲がり、完全に消えた。

結城司は書斎の入口に立ったまま、動かなかった。

陽太の言葉が、まだ耳の奥に残っていた。

——自分が何を求めているかもわからないのに、どうして欲しいものが手に入ると思うの。

五歳の子供の言葉だ。

指が、ドア枠にかすかに力んだ。力を入れたわけでも、離したわけでもない。その言葉は正確すぎた。偶然拾い上げた石を無造作に投げたら、自分でも気づいていなかった亀裂に、ちょうど当たってしまったような——そういう落ち方をした。

しばらく、そこに立っていた。

廊下の白い灯りが、横顔を照らし...

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