第15章

結城司は、すぐには口を開かなかった。

 

リビングの中央に立ち、白鳥遥が半歩後ろから彼の袖を握っている。凛はその向かいに立ち、背後には床から天井まで続く大きな窓、東京湾の光が広がっていた。

 

「負債は一円残らず、全部取り返す」

 

凛が放った言葉が、まだ空気の中に漂っていた。

 

先に目が赤くなったのは遥だった。顔を上げ、唇をそっと噛み、凛が何度も見てきたあの表情——傷ついた、柔らかな、精巧に作られた——で司を見上げた。

 

「司お兄ちゃん……」蚊の鳴くような声。「あの火事……妹さんが、そんなふうに……」

 

結城司の呼吸が、一拍止まった。

 

その名前。

 

結城凪。

 

五年前のあの火事...

ログインして続きを読む