第18章

一夜、眠れなかった。

 

凛は黒いスポーツウェアに着替え、髪を高く結い上げ、スタンガンをジャケットの内ポケットに押し込んだ。鏡の中の顔は蒼白で、目の下には、自分でも隠す気になれない疲労が滲んでいた。

 

外へ出た。

 

電車を乗り継ぎ、タクシーに乗り換える。車窓の外の東京はまだ目覚めきっていなかった。街灯がアスファルトを橙色に染め、人影はまばらだった。凛はシートに背を預け、目を閉じたまま、安田蘭の資料を頭の中で順番に並べ直した。

 

かつては平凡な女子刑務官。五年前、"自己都合"で退職。以降の生活水準は、元公務員のそれとはかけ離れていた——息子を海外の私立に通わせ、自身は東京郊外に住み、質素で...

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