第19章

凛は断った。

 

「大翁は私に会いたくない」背を向けながら言った。「あの離婚届を受理してくれる日を、一日だって待ち望まなかった日はない」

 

言い終わる前に、腰を抱え込まれた。

 

結城司は彼女を荷物のように担ぎ上げ、地下駐車場へ向かって歩き出した。凛は肩を押して抵抗したが、びくともしなかった。頭上で防犯カメラの赤いランプが点滅している。一瞬、動きを止めた。もがき続ける方が、よほど滑稽だと思った。

 

ロールス・ロイスのドアが、乱暴に閉まった。

 

駐車場の入口に、人影が一つあった。

 

桐生拓はタクシーを降りたばかりで、まだ建物の外にいた。一部始終を見ていた——女が担がれて車に押し込まれ、ド...

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