第20章

「自分がしたこと、全部忘れたんですか」

 

言葉が空気を裂いた。結城司は動かない。

 

凛はもう振り返らなかった。手首に残った指の温度を、何でもないものとして、脳の奥の気にしなくていい場所へ押し込んで、子ども部屋を出た。

 

結城司はその場に立ち尽くした。

 

五年前、自分が彼女にしたこと——頭の中を素早く巡るのは、ただ白い空白だけ。拘置所のことは既に調べさせている。だが凛の言葉が指す、あの特定の「何か」は、どの記憶とも結びつかない。

 

分からない。

 

怒りよりも、この感覚の方が辛かった。怒りなら対処の仕方を知っている。だが宙に浮いたこの茫然とした感覚、指の間をすり抜けていく掴めない何かに...

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