第24章

客間の空気が、突然固まった。

淺川文紀のその一言は、何気なく口から滑り出たものだった。声調は怠惰で、しかし針のように正確に、その場にいる全員の間へ刺さった。「これって、結城財団の結城社長の、五年前に消えた奥さんじゃないですか」本人には、その言葉がどれほどの重さを持つか、たいして気にした様子もなかった。視線だけがゆっくりと流れ、修羅場を見慣れた人間特有の、あの気楽な好奇心を帯びていた。

藤堂千紬の笑顔が、顔の上でゆっくりと固まった。口の端に残ったまま、動かなくなった。絵の具が乾いてしまったように。

藤堂昭彦は眉間をかすかに寄せ、口を開かなかった。

凛は頬が熱くなるのを感じた。耳の付け根か...

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