第29章

星野凛は激しくむせた。

 

酒が喉を焼きながら落ちていき、目尻に涙が滲み、胸が波打って止まらない。手の甲を唇に当て、体を折り曲げ、あの灼熱感を押し戻そうとした。

 

結城司は眉間に皺を寄せ、喉仏がひとつ動いた。何も言わず、黙って手を伸ばし、背中を数回叩いた。視線は凛の上に釘付けになったまま、動かない。

 

桐生拓は向かいに座って、その一部始終を目に収めていた。

 

凛の唇に残った酒の痕。司の、たった今の動作。ほとんど密着しそうなふたりの距離。

 

そして——さっきのあれ。

 

拓は頭の中でいくつかの断片を組み合わせ、自分にとってひどく納得のいく絵を作り上げた。唇の赤い痕、口移し——これは事故じ...

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