第36章

夢ではなかった。断片だった。

 

廃工場の火の海——オレンジ色の炎が壁を舐め、煙が肺に流れ込んでくる。医療刑務所の移送中の衝突音——金属が引き裂かれる轟音、四方へ飛び散るガラスの破片、無数の小さな刃のように。その破片の中で体がもがき、逃げようとして、逃げられない。

 

いつの間にか、凛は寝返りを打っていた。

 

腕が何かに触れた——温かい、体温のあるものに。

 

張り詰めていた神経が、弦が切れるように緩んだ。自分が何をしているかわからないまま、凛はその温度の中に顔を埋め、動かなくなった。

 

結城司の片腕が、凛に枕にされていた。もう片方の手は凛の背の上に宙吊りになったまま——触れてはいない。そ...

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