第37章

爪を、掌に食い込ませた。

痛みが他のすべてを押し流すまで、凛はその姿勢のまま動かなかった。

白鳥遥が結城司の肩にもたれていた。酔いが全身を弛緩させ、髪が乱れて彼の首筋に貼りついている。つま先立ちになり、顔を仰向けて、唇を近づけていく——

司が、頭を傾けた。

遥の唇が、彼の顎を掠めた。

凛は視線を戻し、前へ歩いた。

ふたりは右手にいた。そのそばを通り過ぎた。足は止まらず、表情も変わらなかった。廊下の壁と同じように、そこにあるものとして、あのふたりとは何の関係もなく。

司が、気づいた。

あの後ろ姿、あの歩き方——気づいた速さが、自分でも予想より早かった。胸の中で何かが急に詰まり、...

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