第40章

結城司の足音が廊下の奥へ遠ざかり、やがて聞こえなくなった。

個室が静けさを取り戻した。空調が低く唸り、氷桶の中で氷が溶け、細かな音を立てていた。

桐生拓は肘をテーブルに突き、まだ手のつけられていない凛のカップに目を落とした。切り出す角度を探るように、少し間を置いた。

「司も——あの電話、遥のことは、あいつなりに事情があってさ。あなたも知ってるでしょ、あいつはそういう人間で、今夜がこうなったのは別に——」

凛は受けなかった。

カップをソーサーに戻した。急がず、乱れず。

「桐生さん」

拓が止まった。

「この関係は、最初から対等じゃなかった」凛の声は平静で、すでに検証済みの事実を...

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