第52章

白鳥遥の顔から血の気が引いていた。

 

保温ポットを握る指に力が入りすぎて、骨の節が白くなっていた。

 

結城司の黒い瞳は冷たく、何の温度も持っていなかった。星野凛がふたりの子どもをかばうように前に立ち、三人が向き合っている——その光景が、遥の胸に深々と刺さった。

 

苦心して積み上げてきたものが、子どもふたりの言葉で崩れた。

 

なぜ。

 

震える声が、思っていたより醜く漏れた。

 

「……わかりました。司さん、ゆっくり休んでください。私……また明日来ます」

 

言い終えると、誰の顔も見なかった。踵を返し、病室を出た。ドアの閉まる音は小さかったが、その場に残った者たちの胸に、鈍く落ちた。

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