第54章

白鳥遥はベッドの前に立ち、スマートフォンの画面を結城司に向けた。

 

「凛さんが言ったんです」

 

司は枕に凭れたまま、胸の奥が鋭く締まるのを感じた。スマートフォンの画面から遥の顔へ、冷たい視線が移った。

 

「あいつが直接言ったのか」

 

遥は答えず、通話履歴を開いた。編集処理された音声データが再生され始めた。

 

スピーカーから、凛の声が流れた。

 

「離婚は本気で考えています」

 

一拍の間があった。

 

「あなたたちと関わったのは、私の人生で一番後悔していることです」

 

病室に、医療機器の低い唸り音だけが残った。

 

奥歯を噛み締めた。怒りが胸腔の深いところで蔓延していった。明るい炎...

ログインして続きを読む