第55章

結城司の頭が、高速で回転していた。

 

どう答えても深みにはまる罠だ。遥を選べば、凛を死へ追いやることになる。凛を選べば、五年分の負債と罪悪を、全員の前で一度に認めることになる。

 

どちらを選んでも、負けだ。

 

すぐには口を開かなかった。

 

「一億円だ」

 

低く、一語一語を噛み締めるように言った。「ふたりとも解放しろ。金の条件は、いくらでも聞く」

 

変声器の向こうから、嗤い声が漏れた。潰れたような、しゃがれた音だった。何かが砕けるときに出る音に似ていた。

 

「うちのボスはな」声が言った。「金で話をつけようとする人間が、一番嫌いなんだ」

 

一拍置いた。

 

「興味ない」

 

最後の...

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