第59章

背景音楽が、突然切れた。

 

誰かが何かを断ち切ったように。

 

甲板の宾客たちはその場に固まり、シャンパングラスを中空に止めたまま、氷がグラスの壁に当たる音さえも消えていた。

 

星野凛は結城司の前に立ち、指先をその鼻先に突きつけていた。全身が震えていた。

 

酒はまだ抜けていなかった。だがその震えは、酒のせいではなかった。

 

「人でなし」

 

声は小さかった。それでも甲板の空気を、一刀両断に引き裂いた。

 

周囲からかすかに息を呑む気配が広がり、聞こえるか聞こえないかの境界で、しかし確かに存在していた。

 

桐生拓が人垣の端から一歩踏み出した。止めようとした——

 

もう遅かった。

 

...

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