第60章

星野凛の呼吸が、止まった。

 

その言葉が針のように、とうに感覚が死んだと思っていた場所へ、深く刺さった。怒りと羞恥が同時に込み上げ、絡み合い、どちらが重いかわからなかった。

 

足を持ち上げた——

 

とんとんとん。

 

ノックの音。三回、間隔が均等で、場の空気をまるで読んでいない落ち着きがあった。

 

凛の足が、宙で止まった。

 

「司——!昼飯食いに来いよ——!」

 

ドアが内側から勢いよく引き開けられた。

 

桐生拓が入口に立ち、言葉の途中で口が止まった。

 

乱れたベッド。凛は隅に縮こまり、髪が乱れ、衿元が歪んでいた。結城司はドアの脇に立ち、シャツのボタンを半分しか留めておらず、表情...

ログインして続きを読む