第61章

赤いドレスの女が結城司に寄り添うのを見て、星野凛はただ、つまらないと思った。

 

古臭い手口だ。五年前なら泣き喚いて嫉妬していたかもしれない。今はもう、そういう人間ではない。

 

静かに立ち上がり、バーカウンターへ向かった。オレンジジュースでも、もらおうと思った。

 


 

甲板の反対側で、結城司は貼りついてきた女に一言だけ言った。

 

「失せろ」

 

女はウイスキーを差し出し、桐生さんのお勧めだと言った。

 

「桐生の言うことを信じるのか」

 

語気に感情はなく、ただ厭きていた。

 

少し離れたところで、桐生拓が眉を動かし、口だけで「アシスト」と形作り、親指を立てた。

 

結城司のこめ...

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