第64章

衣装を整え終えると、凛は迷わず船室のドアへ向かった。

肩で結城司を押しのけた。視線すら向けなかった。

結城司は動かなかった。視線だけが凛の背中に釘づけになり、黒い瞳の奥で嵐が渦を巻いていた。暗い海に垂れ込める雲のように、いつ天を引き裂いてもおかしくない空気だった。

少し離れた場所に立つ桐生拓は、ふたりの間に漂う一触即発の空気を感じ取り、頭皮がじわりと粟立った。声をかける気にもなれず、黙ってついていった。


甲板に出ると、夜風が正面から吹きつけてきた。

凛は足を止めなかった。視線を前へ——そして、固まった。

真っ白なクルーザーが暗い海面に浮かんでいた。結城司の船と並んで停泊...

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