第65章

結城司は星野凛のあとを追い、船室の扉の前まで来た。そこにはすでに文野篤が横に立っていた。背筋を伸ばし、両手を脇に垂らし、扉枠に嵌め込まれた楔のように、微動だにしなかった。

「こちらは凛さんのお部屋です」

静かな声だった。しかし、そこには一分の余地もなかった。

「どけ」

文野篤は動かなかった。「凛さんのご許可なく、いかなる方もお通しできません」

司は口を開かなかった。廊下の造りを一度見渡し、最後に視線を文野篤の顔へ戻した。「俺の部屋はどこだ」

文野篤は甲板の方向へ静かに目を向け、淡々と告げた。この船には、凛のためだけに船室が用意されている、と。

廊下に沈黙が落ちた。司は彼を見据...

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