第72章

星野凛の脳が、身体より半拍遅れた。

 

身体はすでに動いていた——一歩前に踏み出し、陽太と諒をその背後に遮るように。

 

「ふたりとも、中に入って」声を落として言った。「子供部屋に行って、引き戸を閉めて。出てきちゃだめ」

 

陽太と諒が顔を見合わせた。陽太が口を開きかけ、凛の手が軽く背中を押した。ふたりが小走りで奥へ消え、引き戸が閉まった。

 

凛は結城司を正面から見た。

 

「誰が入っていいと言った」

 

問いではなかった。

 

「出て行け」

 

向かいの部屋のドアが開いた。田村さんが買い物かごを提げて出てきて、こちらへ好奇な視線を向けた。結城司の顔で一度止まった。

 

「あら、この方は……...

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