第75章

結城司は動かなかった。

遥がこんなふうに人に頼むのは、珍しいことだった。普段は何でも先に自分でやり終えてしまう。泣くことはあっても、頼むことはほとんどない——口を開く前に、もう諦めているから。

だからこそ、この一言が。

頼んでいるのではない。慰めてほしいのだ。

その判断が、静かに落ちてきた。

同時に、胸の別の場所で何かが燃えていた。凛の声が繰り返し刺さってくる。「何年経っても、あの人が一粒涙を流せば、あなたには何も見えなくなる」——あの言葉が、今もまだ頭の中で鳴り響いていた。

苛立ちが、喉の奥から積み上がってくる。

遥のせいではない。凛のせいでもない。ぐちゃぐちゃに乱れた、自分自...

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