第76章

 その夜、スタジオ。

 シャワーの熱が肌にまだ残っていた。星野凛は仕事椅子に沈み込み、デスクライトを点けて、昼間に結城財団で味わったあの不快な出来事を、手元の仕事で押し込めようとした。

 マウスを動かし、「飛躍杯」写真・デザイン部門の公募展公式サイトを開く。構図、テーマ、サイズ要件——一項目ずつ目を通しながら、液タブのペンを取り、下書き用紙に気ままに線を引いた。方向性のない線だ。まだ正式なものではない。ただ、頭の中で何かが動いたから、とりあえず記しておく、それだけだった。

 スタジオの中には、エアコンの低い唸りと、たまに通り過ぎる電車の音だけが漂っていた。夜はすでに深く、通りは静かになっ...

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