第80章

徹夜明けだった。

結城司は社長室の椅子に座したまま、東京の夜が少しずつ明けていくのを眺めていた。頭の中ではあの光景が繰り返し再生される——星野凛が駆けていく後ろ姿。藤堂渉のほうへ、迷いなく。まるでそれが自分のいるべき場所だとでもいうように。

そして、あの一言。

「真珠と魚の目の区別もつかないなら、自分でいい手を台無しにしても、文句は言えないな」

口元がゆっくりと歪んだ。

笑顔ではなかった。急所を突かれた人間が反射的に浮かべる、あの表情だ。

彼は勢いよく立ち上がった。

凛が入ってきたとき、彼は窓を背に立っていた。背後からの光が顔を影に落としていた。

「昨夜、藤堂のところへ走ってい...

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