第82章

鶏の声が、静寂を切り裂いた。

星野凛は目を開けた。背中がじんわりと痛む——硬い板張りのベッド、薄い綿布団、空気には土の匂いと草木の気配が染みついている。昨夜からここに来て、体はまだ何ひとつ慣れていなかった。

隣から希乃の声が聞こえてきた。壁を通り抜けて。

「この村……朝寝坊もさせてくれないの……」

不満の声と布団の擦れる音が混ざり合う。疲労と苛立ちと眠気が、ひとかたまりになって。

凛は身を起こし、木の窓枠に手をかけた。軋む音とともに窓が開き、冷たい空気が一気に押し寄せてくる。泥と草木の匂いを連れて。山の稜線は朝霧の中に沈み、輪郭が滲んで、灰白色の靄の底に溶けていた。

「希乃、起きて...

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