第84章

「あら、お二人ともこんなところに。」

村長の顔に、またあの慣れ慣れしい笑みが浮かんだ。敷居を跨ぎながら、声を張り上げる。「こっちは汚いし、臭いもきついですよ。お二人の目の毒になるといけない——」

言葉が終わる前に、彼は凛と病床の間に割って入っていた。

乱暴な動きではない。それでも有無を言わさぬ力があった。腰を屈め、片手で凛の腕を軽く支えるそぶりをしながら、もう一方の手を出口へと向ける。口は動き続けた。

「子どもたちが準備して待ってますよ。さあさあ、大事な用があるんでしょう——」

凛は動かなかった。

村長の肩越しに、病床の女の顔を見つめる。女は半身を起こし、唇を動かしていた。声は出な...

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