第85章

村長が群衆の前に立ち、顔に張りついていた薄っぺらい笑みがようやく剥がれ落ちた。あとには、むき出しの欲望だけが残っていた。

凛は希乃の背後から歩み出た。

一歩、二歩。落ち着いた足取りで前へ出て、真正面から彼を見据えた。

「撮らなかったら?」

大きな声ではなかった。静まり返った広場に落ちたその言葉は、水面に投げ込まれた小石のようにさざ波を立てた。

村長はしばらく彼女を見つめ、やがてゆっくりと口の端を引き上げた。胸ポケットからスマートフォンを取り出し、画面を外側に向けて軽く振ってみせる。

「撮らない?」彼は言った。「じゃあこの写真、週刊誌と関係者に送るだけだ」

画面に映っていたのは、加...

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