第93章

洗面所のドアが開き、廊下の光が流れ込んだ。

凛が一歩踏み出した瞬間、目に入った。

鋭斗が廊下の一角に立っていた。こちらに背を向け、その身体が通路を塞ぐように構えている。向かいにいるのは五十嵐燈だった。二人の距離は近くはないが、その間の空気は何かが張り詰めていて、今にも切れそうだった。

凛は声を出さなかった。

三歩で歩み寄り、鋭斗の横に立ち、自分の体で彼を半ば遮るように位置を取った。

自然な動作だった。本能が先に動いた——意識より早く、体が一歩を踏み出していた。

鋭斗が目の端を動かし、凛を確認した。何も言わなかった。

向かいの五十嵐燈は、さっきの何かの衝撃からまだ抜け出せていなか...

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