第109話くそったれ

六月

エルメスの手からメニューが滑り落ち、どん、と大きな音を立ててテーブルに落ちた。一瞬だけ目を見開き、それから笑いがこぼれそうになるのをこらえるため、私は頬の内側を噛む。

「大丈夫?」そう尋ねて少し身を乗り出し、拾おうとすると、彼はそれを制するように手を振った。顎は固く引き締まっている。

「平気だ」彼は低く、かすれるような声でつぶやく。メニューを元の位置に戻しながら、指先がテーブルをかすめた。

でも、彼がまるで平気じゃないことくらい、私にはわかっている。全然、そんなものじゃない。だからこそ、私の作戦がうまくいっているとわかるのだ。

エルメス・グランデは、誰かが私の心を奪おうとするだ...

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