第132話ナタリアと呼んで

六月。

惨め。惨め。惨め。

あなたって本当に惨めよ、六月。

ロビーの床を行ったり来たりしながら、その言葉が呪文みたいに頭蓋の内側で反響する。エルメスが担架で運び出されてから、脈は一度も落ち着いていない。

……大丈夫、だよね?

手のひらが頬に飛び、軽く自分を叩く。「いま考えてるの、それ? 彼の安否?」私は小声で呟き、首を振った。

最悪だ。彼の婚約者――つまり私の新しい上司――が、たった今「一週間後に結婚する」と宣言したばかりなのに。

一週間。

終わった。負けた。私は、ほんとに負けた。

どんな計画も、どんな小さな希望の火花も――全部、無駄。

諦めなさい、六月。エルメスは最初からあな...

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