第134話やめなきゃ

(曲のおすすめ:ビリー・アイリッシュ「パーティーズ・オーヴァー」のような空気で)

六月

私はSCCの試着室のひとつにいる。鏡には、色合いも形もさまざまなドレスがいくつも映り込んでいた。係のスタッフたちは手際よく、ナターリヤに指示された無言の台本でもあるかのように、一着ずつ私の前へ差し出してくる。指先で布地に触れてはいるのに、心はここにない。どうしても振り払えない思いと、埋められない後悔で、頭の中が白く曇っていた。

彼を手放さなかったことへの後悔。周囲のすべてが「やめろ」と叫んでいるのに、それでも気持ちを止められなかったことへの後悔。ヘルメス――私のヘルメスは、私にとってただの最高経営責任...

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