第137章... キスしたい?

六月

廊下はしんと静まり返り、歩くたびに空調のかすかな唸りだけが空間を満たしている。酸っぱくなったミルクセーキの匂いがドレスにまとわりつき、私は視線を落としたまま足早に進む。こんな姿を誰にも見られませんように、と祈りながら。

足音よりも、頭の中のほうがうるさい。

いまのは何だったの? 本当に事故?

ナターリヤの目――あれは、どう考えてもおかしい。

唇をきゅっと結び、喉の奥にせり上がる塊を飲み込む。とにかくトイレを見つけて、汚れを落として、会議が終わるまで隠れる。それしかできない。

そのとき、足音が聞こえた。ゆっくり、一定で、こちらへ近づいてくる。

私は立ち止まり、息が喉でつかえる。

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