第155話入っちゃった

六月

私は便器の前にひざまずき、胃をひっくり返されるような吐き気に襲われていた。手は震え、膝は今にも崩れ落ちそうで、きつく目を閉じて、この世界そのものを締め出そうとする。

たった今起きたことが、どうしても信じられない。

エルメス……彼は、まるで私なんて存在しないみたいに振る舞った。まるで見知らぬ他人みたいに。そしてぞっとするような一瞬、それが本当のことのように感じられた。いや、もしかしたら本当にそうだったのかもしれない。

これが彼なりの「けじめ」だったのだろうか。私がそこにいないふりをすること。私なんてどうでもいい存在だと装うこと。

しかも……どうやらそれはうまくいった。ナタリアは私...

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