第160章建物内の火災

《ナターリャ》

シャーロットや、通りすがりの客たちと何分か世間話をしているうちに、胸の奥の神経がきりきりと締まっていく。エルメスがまだ戻ってこない。普段なら何もかも起こる前から把握しているシャーロットでさえ、困ったように肩をすくめるだけだった。

「彼、ホストでしょ」彼女は言う。「たぶん、最高経営責任者っぽいことでもしてるのよ」

けれど、それでは落ち着けない。父に「観察しろ」と言われていたし、エルメスがいなくなってから長すぎる。

舌が乾いている。せっかく整えた爪を噛まないように必死でこらえた。父が……父がエルメスを? 違う。違う、そんなことをするはずがない。そんなことをしたら、全部が台無...

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