第174章ナタリア

六月

ヘルメスのまぶたが、ゆっくりと――ためらうように震えながら開いていくのを見つめた瞬間、脇に下げた拳がきゅっと固くなる。胸の奥まで締めつけられた。今だ。勝負の時間。

テッドに目をやる。彼はほんのわずかにうなずき、それから私の隣に立った。両手は私の腰のあたりにふわりと浮き、守る盾みたいでもあり、あるいは落ち着かせる薬みたいでもある。私はごくりと唾を飲み込み、内側で荒れ狂う恐慌の嵐を悟られまいとした。

「……ん、」ヘルメスがつぶやく。声はざらつき、状況を飲み込めていない。「ここは……どこだ?」

胃がきゅっと縮む。彼の脳は明らかに、完全に初期化されている。私が必死で引き戻した記憶の欠片は...

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