第175話また恋に落ちる

   ~ヘルメス~

 なぜそうしたのか自分でも気づかないうちに、俺は彼女を引き寄せていた。

 ジュン……その名は、舌の上で奇妙で、それでいてどこか懐かしく響いた。

 目の前にいる、この世で見たこともないほど美しい女の子を見つめながら、どうしてナタリヤのことなんか思い出しているんだ。そんなの――おかしい。完全におかしい。

 本来ならテッドに聞くべきことはいくらでもあった。俺に何が起きたのか、なぜ病院にいるのか、どうして頭の中が配線を組み替えられているみたいな感覚なのか。なのに脳はまるで言うことをきかない。浮かぶのはただひとつ――テッドはどうやってジュンみたいな子を自分の人生に連れてきたん...

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