第177話一夜限りの後

   ~ヘルメス~

テッドが入ってきた。足音が、張りつめた空気をメスのように鋭く切り裂いていく。

「ここで何が起きてるんだ?」彼はそう尋ねた。その口調は穏やかだった――穏やかすぎるほどに。

ジューンは弾かれたように俺から身を引いた。そのあまりの速さに、二人のあいだの空気が砕け散ったように感じた。俺は鋭く息を吐く。まるで誰かに拳を肋骨のあいだから突き込まれたみたいに、喪失が胸をえぐった。そして見た――いや、無理やり見届けた。テッドの手が、彼女の腰のくびれにそっと置かれるのを。

そこは、最初に俺の手が覚えた場所だった。

胃がねじれた。締めつけられた。嫌な酸っぱさがこみ上げた。

こんなの...

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