第178章払うべき小さな犠牲

六月

ヘルメスの声を耳にした瞬間、目が見開かれた。

その言葉は、強く叩かれすぎた鐘の音みたいに、私の内側でいつまでも反響する。

あの一夜のことのあと。

一夜限りの関係。

彼は、始まりを覚えている。

私たちが出会った瞬間を覚えている。

胸が高鳴り、私は勢いよく立ち上がった。手首の痛みは無視する――さっき、うっかりヘルメスの部屋の窓にぶつけて青あざを作った、あの手首だ。

「ヘルメス、いま何て言ったの?」息が上がったまま問い返す。信じられない。うまくいってる。私たちの計画は、本当にうまくいってる。彼が思い出してる。

ヘルメスがひゅっと息を吸った。「え? あいつ、一夜のこと知らないの? ...

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