第185話運が悪い

ジューン

気づくより先に、私は彼の名を呼んでいた。

「ヘルメス」

自分のものとは思えないほど、声はか細く震えていた。指先はテーブルの縁で小刻みに震え、胸は締めつけられ、肺はまともに息をしてくれない。どうして真っ先に彼を見たのか、自分でもわからない――それでも、見た。

そして、それだけで十分だった。

ヘルメスが動く。

テッドは即座に反応し、彼の腕をつかんだ。「ヘルメス――よせ。落ち着け。考えるんだ――」

けれど、もう遅かった。

私はヘルメスの目の中にそれを見た。理性が消える、その瞬間を。むき出しの、獣じみた何かが彼を支配する、その瞬間を。彼はまるで何の重みもないみたいにテッドを振...

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