第5章「何とかできる」
六月
火山が噴き上がるみたいに、私はアパートに怒鳴り込み、足音を立てて入った。
ありがたいことに、記者会見が終わるや否や、彼は全員を解散させ、会社を出ていった。機嫌は。最悪。中の。最悪。
玄関のドアを叩きつける音が、フックに掛かった鍵を揺さぶって落とすほど響く。ジャケットは床へ放り投げた。バッグも次に落ちる。けれど、この怒りだけは、そう簡単に出ていきそうにない。
ケイラはソファにだらりと寝そべり、スマホを片手に、脚を肘掛けの上でぶらぶらさせている。歯磨き粉のCMのオーディションでも受けているみたいな格好だ。まばたきすらほとんどしない。
「早かったね」彼女は言う。ガムを噛む音が、まるで私の魂を噛み砕いているみたいだった。「街いちばん新しいインターンのくせに、そういうの意外」
答えない。私は部屋の中を行ったり来たりし始め、ヒールを片方、次にもう片方と脱ぎ捨てた。どちらもタイルにカン、カンと乾いた音を立てる。
ケイラが眺めてくる。「でぇ……アペックス社・企業絶望宮殿で、なんかあったの?」
私はくるりと振り向き、目を見開く。「なんかあった?」笑いが漏れる。けれどそれは、脅しみたいな響きだった。「数時間前の私に何が起きたか知りたい? 二日前に寝た男――レイラに『口説け』ってけしかけられて、からかわれて、私がちょっとちょっかい出した、あの男が……私の上司だって分かったの。上司どころじゃない。あいつ、アペックスの最高経営責任者なの」
沈黙が、いきなり部屋を支配した。針が落ちる音も聞こえそうな、死体のある現場みたいな沈黙。
ケイラは瞬きをして、それから背筋を伸ばし、もう一度瞬きをした。「待って。え?」
私は頷き、腕を組む。力が入りすぎて折れそうだった。「うん。ヘルメス・グランデよ。アペックス社の新しい最高経営責任者。ついでに、名前も知らないまま私が寝た男」
ケイラの口が、壊れた菓子のディスペンサーみたいにぽかんと開く。「待って待って待って。つまり、バーでヤッた相手が上司ってこと?」
「そのとおり」
部屋の向こうでノートパソコンに向かっていたレイラが顔を上げる。唇がわずかに開き、目が大きく見開かれていた。「ジュン……本気?」
「本気じゃなければいいのに」
ケイラが口笛を吹く。「うわ、マジか」
彼女は一拍置いて、唇に不自然な膨らみを入れた蚊みたいな声で付け足す。「でもさ、これ、わりと自業自得じゃない?」
私は瞬きをした。「……は?」
ケイラは肩をすくめる。「だって、賭けは『口説く』でしょ。番号聞くとか、せいぜい一杯飲むとか。その先まで行く必要なかったじゃん。まして、何も知らない相手と」
顎が落ちる。「今、私のせいだって言ってるの?」
彼女は両手を上げる。「言ってるだけ。次はさ、一夜の過ちにキャリア全部ぶん投げないように、って」
「何なのよケイラ。額に書いてあったわけじゃないんだから!」
「だからでしょ」
私は拳を握りしめる。「あなたの意見なんて、どうでもいい」
ケイラは眉を上げた。「はいはい。敏感すぎ」
私は違法なことをしでかす前に背を向けた。胸がきゅっと締まり、急に部屋が暑すぎる。視線がレイラへ飛ぶ。彼女はまだ静かだった。
一言も言っていない。
「レイラ?」私は今度は少し声を落として呼びかける。「本当に、何も言わないつもり?」
彼女はゆっくり私を見る。まるでスローモーションで列車事故を眺めているみたいに。
「考えてるの」彼女は言った。
「何を?」
「どう直すか」レイラは落ち着いた声で答える。「あなたを責める代わりにね」
喉の奥がひりついた。一瞬、呼吸の仕方を忘れる。
ケイラのスマホが鳴る。彼女はそれを取り、相変わらず得意げにガムを噛みながら自分の部屋へ消えた。
それで、残ったのは私とレイラと、少しだけ安全に感じる沈黙。
私はソファに沈み込み、膝に手を置いた。「ケイラの言うとおりだよ。私が悪い。ああもう、私って生きてる中でいちばんのバカだ」
「違う」レイラは即座に言う。
「触らせたのは私だ。あいつに……神様、あいつに私をめちゃくちゃにさせた。なのに今、あいつは私を靴の裏の泥みたいに見る」
レイラは多くを言わない。ただ手を伸ばして私の手を握り、ぎゅっと力を込めた。それだけで十分だった。
その夜遅く、私は屋上にいた。
ここは静かだ。自分の考えの音が聞こえるくらいの静けさ。危険な静けさだ。最近の私の思考は、優しくないから。
私は仰向けに寝転び、街の煤けた空気越しに瞬く星を眺めた。レイラも上がってくる。フードをきゅっと引き、脚には毛布を巻いている。しばらく何も言わず、膝を抱えて座っていた。
それから、彼女が尋ねる。「星、いくつ?」
「十四と半分」私は平然と答えた。
彼女は鼻で笑う。「半分の星って、どうやって数えるの?」
「一つは雲の後ろに隠れてたんだ。だから半分だけ点をやった」
彼女はくすりと笑う。それから、「辞めたい?」
私はがばりと起き上がり、まるで彼女に頭がもう一つ生えたみたいな顔で見た。「インターンを?」
彼女はうなずく。
私は笑った。今度は本当に。荒っぽくて、苦くて、少し壊れかけた笑いだった。「辞める? レイラ、私はこのインターンのために二年も必死で這い上がってきたのよ。この街でやっていくために、缶詰の豆を食べてしのいだことだってある。男一人に、ましてあの男なんかに――びびって逃げたりしない」
薄暗い光の中で、彼女の目が私をじっと見つめる。「あの……あんなふうに扱われ続けても?」
私は肩をぴんと張った。「だったら、あっちのほうがどうでもいい存在みたいに接するまでよ。もちろん、仕事上はね」
彼女は言い返さず、ゆっくりとうなずくと、再び身を横たえて私の隣で星を数え始めた。そしてその瞬間だけは、たぶんやれる、と思えた。いや、やれる。
*
やれない。
翌朝は希望で始まり、屈辱で終わった。
私はミスター・グランデにコーヒーを持っていく。和解のしるし。つまり「私をクビにしないでください、だってあなたの裸を見ちゃったので」という賄賂だ。注文は三回確認した。
彼はひと口すすって、顔をしかめた。「頼んだものと違う」
「深煎りで、アーモンドミルクで、砂糖一つ――」
「なら、君はちゃんと聞いていなかったんだな」彼は平然と言う。「やり直せ。今度は耳を使え」
喉元までせり上がってきた言い返しを、私は必死に飲み込む。
下へ降りて、もう一度注文し直す――焙煎の種類を変えて、ショットを追加。二度確認して、三度確認する。爆発物入りのガラス玉でも持つみたいに、カップを抱えていた。
戻ると、彼はそれに手も触れない。
「違う。これは私の欲しいものじゃない。これからは自分でコーヒーをいれることになりそうだな。秘書がまともに一杯も用意できないなら」
危うく彼に投げつけるところだった。
どうぞ勝手に。自分でいれればいいじゃない。コーヒーメーカーはそこにあるでしょ。あなたの向かい側に。飾りじゃないのよ、ミスター・グランデ。
そう言うべきだった。
でも実際には、刃でできた歯の隙間から笑みを作って、同僚にこの謎解きの手助けを頼んだ。さらに二回やり直し、さらに三度指をやけどし、女性用トイレで震える息を一つ吐くはめになった。
ようやく正解を持っていったころには、彼はろくに私を見もしなかった。
「会議だ。来い」
私は瞬きをする。「でも、私はてっきり――」
「来るんだ」彼はそう言って、もう歩き出していた。
それで私は、骨のない馬鹿みたいにそのあとをついていく。
―――
そのレストランは、呆れるほど高級だった。真っ白なテーブルクロス、きらきら光るシャンデリア、そして一音節ごとに料金を取りそうな顔をした給仕たち。私は彼の後ろをついて歩きながら、すでに自分が場違いな偽物みたいな気分になっていた。
彼は案内係に言う。「個室を。グランデだ」
それから私は、言われたとおり外で待つ。
せっかくだからと目を働かせ、金色の金具や大理石の床を眺めていた、そのとき――
「ジューン・アレグザンダー?」
私は振り向く。
タイラーだ。ケイラの五人目の元彼。背が高くて、お調子者で、やたら声の大きい冗談を飛ばして、天井にひびを入れそうなくらいエネルギーに満ちている。青いボタンダウンシャツを着て、太陽でも食べてしまいそうな大きな笑みを浮かべていた。
「へえ、これはこれは」私は笑いながら、もう彼のほうへ歩いていた。
私たちはハグをして、話し込む。口が勝手に動き出し、ここ数日で初めて、体がふっと軽くなるのを感じた。
ケイラのことを冗談にする。二人は険悪な別れ方をしたわけじゃないから、それができる。それから話題は、ひどいテキーラと、それ以上にひどい二日酔いの思い出へと流れていく。彼がケイラと付き合っていたころ、私はよく彼と飲み仲間になっていた。
「で、最近は何してるの?」私は前よりずっと洗練された服装に目をやりながら尋ねた。
「まあね、こんなこととか――」
「中へ」
私は凍りつく。
その声――低く、しゃがれていて、ガラスみたいに鋭い。ミスター・グランデだ。そして彼は、私のすぐ真後ろに立っていた。
「え?」私は間の抜けた声を出す。
彼と過ごして三十二時間、はっきりわかったことが一つある。彼は同じことを二度言わない。
彼は個室を指さした。
「でも……会議のときは外で待てって言ったじゃないですか」
「気が変わった」彼の冷たい目が、ほんの一瞬だけタイラーへ向く。本当に、一瞬だけ。でも見えた。あの妙な、顎のぴくりとした動きが。
私はタイラーに目をやる。彼の表情は変わっていた。警戒している。
私は小さく「ごめん。上司なの」とつぶやき、ヘルメスのあとを追って素早く中へ入った。
なのに、いったい今度は彼の何がおかしいのか、私にはさっぱりわからなかった。
