第54章私たちの間の拷問

〈作者視点〉

[推奨曲:防弾少年団『ブラック・スワン』――オーケストラ版]

オーケストラがふくらみ、不吉な気配をまとった『ブラック・スワン』の最初の旋律が、煙のように舞踏室を這ってゆく。ヘルメスはためらわなかった。ジューンを引き寄せ、片手を彼女の腰にしっかりと添え、もう片方の手で小さな手を包み込む。

「俺に合わせろ」

低く落とされたその声は、彼女にしか聞こえない。

ジューンは、うなずいた。張りつめすぎていて、声が出なかった。

彼が導く。ゆっくりと、踏んで、踏んで、滑るように進むその足取りへと彼女を連れていく。けれど、ジューンは自分の足元に意識をつなぎとめておくのに苦労していた。なぜ...

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