第82章どれも関係ない

   ――ヘルメス――

ポールの声が、俺の集中をすっぱりと断ち切った。

「グランデ様、こちらはミラー・ヴァネッサさんです。本日より秘書としてお仕えいたします」

書類から視線を上げる。そこにひとりの女が立っていた。背はそこそこ高く、すらりとしていて、まるで面接の場にでもいるみたいに両手を揃えている。たぶん、見た目は悪くない。大きな緑の目をしていて、唇には礼儀正しい微笑みが貼りついていた。

いつもの反応を待つ。新しい女が目の前に現れるたび、腹の底に走るあのかすかな疼き、むず痒さ、引き寄せられる感覚。だが、来ない。何もだ。ぴくりともしない。

……はあ。

もう今さら珍しくもない。だが、だんだ...

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