第92章それは必要ありません

ジューン

バスは低く唸りながら高速道路を進み、砂漠が左右に果てしなく広がっている。私はいまだにバッグをぎゅっと握りしめたままで、胃のあたりでは不安がきりきりとねじれていた。

私は前方へちらりと目をやる。いつもながらやたらと機嫌のいいヴァネッサは、もうヘルメスの隣の席に落ち着いていて、まるで専属の付き人みたいに彼の持ち物を整えていた。彼がふと顔を上げるたび、彼女はにこにこと笑いかける。ヘルメスは気もなさそうに一度うなずくだけなのに、その唇は何かをこらえるようにわずかに動いた。

私は眉をひそめる。どうして彼女にそんなことをさせているの? どうして彼女には……あんなに柔らかいの? なのに私には...

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