第5章
車窓の外の街灯が霧の中でぼんやりと光の輪になり、風城零の車内には濃い煙の匂いが充満していた。彼が三本目の煙草に火をつけたのだ。
狭い空間では煙がどこにも逃げ場がなく、私はむせて何度も咳き込んでしまう。
「少し窓を開けてくれない?」
私は思わず言った。
風城零は冷ややかに私を一瞥した。
「どうした、今ではこの程度の煙草の匂いも我慢できなくなったのか? 涼宮のお嬢様も随分とヤワになったものだな」
だが、彼はそれでも窓を開けてくれた。
「お前はあの頃、あいつのせいで俺を断ったのか?」
涼宮家の事業がまだ破産していなかった頃、私と風城零は最もお似合いの二人と見なされていた...
ログインして続きを読む
チャプター
1. 第1章
2. 第2章
3. 第3章
4. 第4章
5. 第5章
6. 第6章
7. 第7章
8. 第8章
9. 第9章
縮小
拡大
