第100章

林夕葵は目を覚ました。

天井は白い。彼女はそれを、まる一分見つめ続ける。

ベッドの縁には陸川時生が腰掛けていた。手には果物ナイフ。剥きかけのリンゴの皮が、途中でぷつりと切れてゴミ箱に落ちている。

「先輩」

林夕葵が声を出す。

陸川時生の手が止まり、顔だけがこちらを向いた。

「微積のノート、持ってきた?」

林夕葵は手を差し出す。掌を上に向けて。

陸川時生はナイフを置いた。彼の視線が、彼女の手に落ちる。――彼女の認知は十年前へ引き戻されていた。N市大学の図書館。

「持ってない」

陸川時生が言う。

「うそ」

林夕葵は掛け布団を跳ね上げ、裸足のまま羊毛のラグを踏む。まっすぐ陸...

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